ゼロから始めるオンラインゲーム規制

2016年11月20日(日曜日)

気になった記事がありましたんで。

先週、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する質問主意書」を提出しておりました。本日、閣議決定を経て答弁書が返ってきました。そのまま掲載します。あまりコメントは加えませんが、結構、画期的な事が書いてあるような気がします。

引用元:緒方 林太郎2016年11月18日 10:15質問主意書(風営法)

ぼくはゲーム業界において、ゲーム設計やゲーム運営としてのRMT対応(対策でもなければ、研究でもないです)についてはそれなりに年季が入っているんですけれど、刑法(賭博)や風営法については関連して資料を引いて確かめながら解釈していったり、法律の専門家に頼らなければならない立場です。

その上で、ピンとくるものには様々な思考をして、何が起こっても良い状態にしておかなければならない。

今回引用したのは、緒方 林太郎さんという議員のブログです。ぼくはこちらの方にお会いしたこともないし、記事を読んだだけなのでどのような活動をしている方かもよく知らない。

(人的な関係性や思想への影響や支持の有無なり可否なりを断り書きしておかないと、ネットはほんとうに面倒くさい方向から斧やマサカリが飛んでくるんで、一応)

こちらの方が質問主意書を提出したところ、答弁書が返ってきたという内容なのですが、リンク先から読んでいただくとして、気になったのは下記です。

六 ぱちんこ屋で景品を得た後、その景品を金銭に交換している現実を政府として把握しているか。

七 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定されるぱちんこ屋は、刑法第二編第二十三章における罪の違法性を阻却する必要はないのか。

(引用元:同上)

ぱちんこに関する質問なので、それ以上でも以下でもない感じです。「ぱちんこの景品が換金されてるのわかってんの?」「(わかってるなら)ぱちんこ屋は、賭博罪の違法性を阻却する必要あるんじゃないの?」ということです。賭博については下記。

(賭博)
第185条 賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
(常習賭博及び賭博場開帳等図利)
第186条 常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。
2 賭博場を開帳し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
(富くじ発売等)
第187条 富くじを発売した者は、二年以下の懲役又は百五十万円以下の罰金に処する。
2 富くじ発売の取次ぎをした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
3 前二項に規定するもののほか、富くじを授受した者は、二十万円以下の罰金又は科料に処する。

(引用元:第2編第23章 賭博及び富くじに関する罪

「違法性を阻却する必要」というのは、ここでは「法令に基づいて行われる行為や社会通念上正当な業務による行為にする必要」と言い換えても良いかなと思いますが、「ほっといたら賭博でしょ。これ法令に基づいてるから大丈夫、ってことにしておかなくていいの」っていうことです。で、答弁が下記。

六について

客がぱちんこ屋の営業者からその営業に関し賞品の提供を受けた後、ぱちんこ屋の営業者以外の第三者に当該賞品を売却することもあると承知している。

七について

ぱちんこ屋については、客の射幸心をそそるおそれがあることから、風営法に基づき必要な規制が行われているところであり、当該規制の範囲内で行われる営業については、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百八十五条に規定する罪に該当しないと考えている。

引用元:緒方 林太郎2016年11月18日 10:15質問主意書(風営法)

「ぱちんこの賞品が売却されてるの承知してるよ(景品が換金されてるの知ってるよ)」まあ、はい。知ってるんですね、くらいの印象。そして次なんですが、「風適法の規制の範囲内で行われているので賭博に該当しないと考えてるよ」というところです。これは読み取り方なんだろうけれど(解釈が一つしかない答え方なんて危険だからしないでしょう)ぼくは「“あらためて”罪の違法性を阻却する必要ないでしょ、すでに風適法規制の範囲内なんだから」と読みました。

さて、積極的に騒いだところで話題として消費されてしまって落とし所が見えないまま語られる危険性が高いので慎重に書きますが。上記のぱちんこの例をもって主客を入れ替えたり対偶をとったものが必ずしも真ではないとは思いつつ下記。

『電子くじで得られたアイテム等を換金するシステムを事業者が提供しているような場合や利用者が換金を目的としてゲームを利用する場合は、「財産上の利益」に該当する可能性があり、ひいては賭博罪に該当する可能性が高くなると考えられる』という話題(内閣府第233回 消費者委員会本会議『スマホゲームに関する消費者問題についての意見 ~注視すべき観点(案)~』)が出たばかりの「オンラインゲームとRMTの関係」について、おかしな方向へ議論が進まないことを祈ります。

おかしな方向というのは具体的には『風適法等何らの規制のないオンラインゲームに換金手段があるとしたら、風適法の規制の範囲内で営業しているぱちんこと違って、まさに賭博である』という乱暴な議論や、この乱暴な議論をもって「オンラインゲームは賭博について罪の違法性を阻却する必要がある業態で、何らかの法の規制の範囲内で営業を行わせるべきだ」とさらに逆に論を積み上げていくことです。そんなものは論とは言わない。今のうちに言っておくが、そういうことを言い出す者がいたら、明らかなる言いがかりで頓珍漢である。

この点で、今一度、「オンラインゲームが先にあり、ゲーム事業者をさしおいて、ゲームの外側で換金することを生業とする者がいる」ことの不自然さをまず広く知らしめ、是非を問うところからやり直すべきではないかな、と思います。

ソーシャルゲーム(オンラインゲーム)のガチャがRMTと併せ技で賭博法に抵触の可能性について(追記あり)

やまもといちろうオフィシャルブログ 2012年3月7日

メーカー vs. 業者。RMTがはらむ問題と可能性をめぐる座談会

4Gamer.net 2006年4月6日

そして来年(2017年)、改正された「資金決済に関する法律」の施行となりますが、「仮想通貨交換業」という定義に対して、幅広い解釈をしてお墨付きを得たとばかりに「ゲームアイテム換金事業」へ特攻していく者が現れるのかどうか、という感じもしています。どんな感じかを二文字で表わせとなると、「憂鬱」でしかないのですが。

もちろん「前払式支払手段」と「仮想通貨」はそもそも違うわけですが、ゲームアプリ内のアイテムが資金決済法に基づく供託金対象となったというニュースも含めて考えると、その境界はケースバイケース、曖昧模糊としたものということでたかをくくるのは簡単ですが、線を引かれるときは一瞬です。

別に仏の顔が三度のイエローカードの後に鬼になるわけではないんです。人間の顔は、理性的で論理の整った思考とは無関係に、利害や名声や嫉妬や親同胞(おやはらから)を人質に取られたような出来事で、ぱっと変わるようなものなんです。

というわけで、オンラインゲーム規制の足音は随分前からひたひたと聞こえてきていたところに、特に今年に入ってから、ゲームへの愛情の薄い人々によって、盛大にドッカンドッカンと地雷が踏み抜かれており、その度に飛び散った瓦礫で外堀が埋め立てられていっているという状況を書いてみました。


「価格」の範囲を超える「価値」を引き出す仕事(モンケンの記事を読んで)

2014年9月6日(土曜日)

土曜の朝は、この記事から始まった感じあります。

【山本一郎】それぞれのモンケン。クラウドファンディングのあした

インディーの困難とクラウドファンディングの未来

資本主義、貨幣経済、どちらも大変に便利で、我々は多分にその恩恵を受けて生きていて、価値の測れないものにも価格を付けることができるようになったし、その半面「価格では表せない価値の存在」を常に突き付けられもしている。

この二つの記事を読んで思ったことは、記事中に出てくる登場人物が筆者のやまもとさんを含め、全てまっすぐであった、ということに尽きると思うのです。
それは、下記に引用するパラグラフが、とても象徴的でして。

 いや,充分完成してますから。もうすでに楽しそうですから。立派に動いているじゃないですか。で,飯田さんにも確認してみると「このぐらいの状態で”完成品だ”と思ってほしくてモンケン立ち上げたんじゃないので」。

ぼくのようなおおよそ中途半端な人間にはとても。

折り合い付けるの大好きなんですよ。ぼくは他人に何の期待もしないクセがあるので。誰かと誰かが妥協するポイントを見つけて結びつけるしかない。
価格の範囲に収める仕事はそんなに難しいことじゃない、誰にでもできる仕事だと思います。大して面白くもない。

でも、ここで価格の範囲を超える価値を引き出す仕事ですよ。

これは、クリエイターのクリエイションに全幅の信頼を置きつつ、数字を積む人の着地点も適える、範囲内から良い方向へはみ出させる仕事。
こういうのをプロデューサーができると、クリエイションとしても、ビジネスとしても、大変良いものを届けることができるのだなぁ、と。

そして、記事の筆者として「取材」をしながら、やまもといちろうさんという人はそういう「このプロジェクトに求められていたプロデューサー能力」を、はからずも発揮してしまった。その「ケンシロウが小指で秘孔を一突き」みたいなことが、大事だった。

たぶん、もやもやっと誰もが見えてたと思うんですよ。
「クラウドファンディングという手法が合ってなかっただけ」って。
それはクリエイションを突き詰めるってことからしたら、些細なことだったって。

だから、最後にきちんと(文章の構成として、ではあるけれど)クラウドファンディング企業に取材をして、

そういう文化を作り上げていくのも,あまり考えずプロジェクトをノリで立ち上げる勢いだけでなく,最後のところは作り手としての魂が一つひとつ集まって,そういう新しい形の資金調達を回していく文化を形作っていくんじゃあるまいか。

という示唆で締めてるんだなぁ、と。

ほんとうに、素敵な記事をありがとうございました。


Seal the Love! Seal the Forever! -10-

2014年7月21日(月曜日)

ちょっと間が開きましたけど、気が向いたら書いてる感じなのでご容赦ください、11回目。オープンβ開始から約一ヶ月。ルビー噴水のチートを技術ではなく、GMの事後対処で凌いでいたその頃……

雑誌のインタビューは、鍋を囲んで和やかなムードで進められた。インタビュアーはアバター原田氏とN氏の2人。アバター原田氏は、今更説明も不要なほどのMMO界での有名人だ。ぼくなんか比べものにならないほどMMOに造詣が深く、特にUltimaOnlineやDAoCでも名を馳せていたプレイヤーでもある氏は、β以前(韓国語版しかなかった時代)から『SealOnline』を猛プッシュしていたし、シィルツの中でプレイヤーが抱えている不満や改善点などについても、氏のもとにかなり寄せられていた。

気軽にインタビューを受けたかったところだが、そういった氏のプロフェッショナルなツッコミに緊張せざるを得なかったし、例のチートのせいで、ぼくやGM_Kabraはそんな場でもゲーム内のことが気がかりで仕方がなかったのである。

10年後の今であればそこそこのスペックのPCを、電源を借りながら、かつ無線通信なんか使っちゃったりしてチェックしつつ、なんてこともできたはずだ。だが、2004年初頭である。モバイルの手頃な回線といえばAirH”の32Kbpsパケット方式の使い放題や、あるいはP-in Compactのような回線交換方式64Kbpsだったけれど、全然ネトゲできる感じじゃなかった。

そんなわけで、いつ浅草橋から電話がかかってくるかみたいなことが頭から離れないまま、『Seal Online』内の話や、今後のアップデート予定について、あるいはGMイベントの今後についてを語っていったのだった。

いいタイミングで、座敷にぼくの好物が運ばれてきて、テンションMAXに。それは殻付きの生牡蠣である。これが大きな木枠の容れ物に砕いた氷が盛ってあって、そこにいくつも積まれている感じで運ばれてきた。

ところでぼくの性格なのだけれど、こうやって鍋だとかみんなで突つくとか大皿に載ってくるとか、そういう状態の場合は躊躇なく好きなものを食べる、という癖がある。ぼくも大人なので、一応みんなが食べたかなぁ、という頃に箸を伸ばすようにしているのだけれど、それは、そうでもしなければ最初から最後まで(他の人が箸をつける前に)食べ終わってしまうみたいなことが発生してしまうからである、子供か。

この時も、それぞれが一つずつ手にとって食べるのを見届けてから食べたわけだが……
「うまいっすねー、これ!」と食べている姿を見て、アバター原田氏も、GM_Kabraも「澤さん、残りを食べちゃっていいですよ」という。「え、いいんですか」とか言いながら、まったく遠慮なく完食。たぶん、1人3つずつとかの量だったので、7〜8個は食べたということになる。

普段貧相な一人暮らしだったものだから、食べられるときに全力で栄養補給するみたいな、そんな至福でもあった。
そして、予想通り途中で浅草橋(そのときはGM_Teraphyであったと思う)から電話があり、またルビー撒きが発生したようで、二次会(汗)はナシということでお二方と別れ、ぼくとGM_KabraはGBMの事務所に戻ったのである。

戻った頃には、おおかたルビー撒きの対処は完了していて、「慣れてしまうのね…」的な感想を抱きつつ、万一に備えてぼくは簡易ベッドで眠り、夜勤のGMが明けて帰る頃に起こしてもらうことにした。

そのとき、簡易ベッドの場所といえばオフィス内でもゴミ袋を積んである隅で、ゴミ袋っていうのは45リットルの大きいやつが2個3個みたいな、そりゃ十数人が出入りしてコンビニ弁当だなんだのガラが出まくるところなわけで、次の収集日まで一週間待てない状況のものを積んでいたわけだ。パーティションで囲って隠していたのだけれど、そこに簡易ベッドもあった。たぶん山とかでキャンプするとき用のやつだ。アルミかなんかのパイプにナイロンの頑丈な布が張ってある。

ぼくはどこでも寝られるのと、ここに出入りするようになってからそれなりに疲れも溜まっていて、そんな環境でもぐっすりと熟睡してしまったわけだが……

次の昼、ぼくが目覚めたころ、GM_Gazzaが「澤さん、昼、どうします? 自分、ホカ弁買って来ますけど?」という。
「あれ? もう昼? 寝すぎたごめん…」と言いかけて、「あれ?GM_Kabraが来たら交代なんじゃないの?」と聞くと、
「それがKabraさん、来てないんスよねぇ。昨日呑みすぎたんすか?」と。
そんなに飲んでたかなぁ、と思いながら「まあ、ぼく、起きたし、あとは見とくよ?」と言うと、「大丈夫ッス。メシ食ったら適当なところで帰りますから」という。なので、ぼくは、のり弁を頼んだ。

なんでその時にのり弁を頼んだなんて細かいことを覚えているのかというと、のり弁のフライ、油が悪かったのかすごくマズかったからである。記憶にあるうちで最悪のレベルだったのでとても良く覚えているし、このハプニングが起こったときだったので忘れられなかったというのもある。

ぼくにのり弁のマズさを忘れられなくしたハプニングとは、さらに翌日になって、丸一日連絡をくれなかったGM_Kabraからの電話で明らかになったのである。

「澤さん……すみません、病院に行ってまして……胃液が全部出ちゃったみたいで……澤さんは、大丈夫でした?」
「は? 別になんともないけど。ひょっとして、何か、当たった?」
「医者が言うには牡蠣じゃないかって。でも、一つしか食べてないですし、澤さんたくさん食べてましたよね……」
「あー、いや、とにかく休めよ。こっちはなんとかすっから」
「すみません……」

そして、気になったぼくは記事用のアイテムデータをFAXで送るついでに、アバター原田氏の編集部に電話を入れた。
「あの、GBMの澤と言いますけれど、原田さんはいらっしゃいますでしょうか?」
「すみません、昨日より入院しておりまして……」
「!? あ、あっと、では、Nさんは……」
「おそれいります、Nも昨日から出てきておりませんで……」
電話口の人はとても申し訳なさそうに言う。ぼくはとりあえずFAX送ったのでチェックしてほしい旨だけ伝えて電話を切った。

4人中、3人が牡蠣に当たった。みんな1つか2つしか食べてない。そして7つは食べたぼくが、ピンピンしている…… むしろのり弁のフライがマズかったみたいなことのほうが食のトピックとしては上位に来ている昨今。

このことがあり、Kさんと相談して、GM募集を急遽行うことになったのであった。
応募してきたのは、後にGM_Etude、Asyuramu、Astlaiaとなるメンバーである。(ExusiaiとGomatenはもうちょっと後だ)
そして人員の増強とともにオープンβテストも(ろくにアップデートがないまま)佳境を迎えつつ、並行してポータルサイトの協力もあって広告なども少しずつ出せ、「しるしるシール」という……そのあたりのことは次に書くことになると思う。

(気が向いたら、続きを書きます。)


Seal the Love! Seal the Forever! -9-

2014年6月29日(日曜日)

例えば、あなたが「この盾はね、どんな矛でも防ぎますよ」って商人に言われたら、とりあえず、木の枝とかでつついたり、軽くコンコン叩いたりするじゃないですか。「どんなものでも貫く矛」で試す前に。

で、コンコン叩いたら、すぐ壊れて何も防げなかったんですよ。某プロテクト、ってソフトウェアなんですけどね。そこから始まる10回目の思い出話記事です。

なにしろ告知に「絶大な」とか書いちゃったわけです。新たに組み込まれたこの仕組は完全にチートを防ぐ、と。こいつは威力があるぞ、と。

……ところが、そこに待っていたのは、「全画面モードでしか起動しない『Seal Online』」と、「起動中のアンチウィルスソフトやメッセンジャーソフトさえ叩き落とそうとして巻き添えを食らってOSが落ちる」という阿鼻叫喚の地獄。

そして、すぐ2ちゃんねるで突破方法が晒されましてね。晒された手順でさらっと突破できるようなチートに慣れたプレイヤーに対してはなんの効果もなく、突破方法なんか知るよしもない(2ちゃんねるなど見もしない)フツーのプレイヤーが大迷惑。PCのOSは落ちるわ、アンチウィルスソフトとコンフリクトして固まるわ、挙句の果てに起動しなくなるわ、って一番損をしたっていう。

この某プロテクトが破られた当時の手法は、まず全画面モード固定になっているのを、ウィンドウモードができるようにする(窓化)ところから始めるというものだった。これは何か起動時のコマンドラインに引数をつけるんだったか、バイナリエディタでどこかのアドレスを潰してチェックしないようにするんだったか、その両方だったかで回避できて、ウィンドウモードにできたら、起動している某プロテクトのプロセスをKillするとかだった気がする。

プロテクト用ソフトウェアだからといって、他のソフトを叩き落とすとかほんと行儀悪いんだけど、この時のバージョンは案外あっさりと自分自身が叩き落とされるみたいなお茶目なソフトで、それはそれとして後にプロセスもKillできない行儀悪さMAXのバージョンにまで行き着くと、起動時にバーン! って盾だか矛だか(攻撃しないんだから矛ってことは無いか)のロゴまで出てくるんだけど、行儀が悪かろうが毒をもって毒を制すぜ! そこまでしないともはやチートの一個や二個防げねーんだぜ、ドヤァ! という開き直りが感じられてある意味潔い。

そんな感じで試しに2ちゃんねるに書いてあった方法をやったら、すんなりできてしまって、気持ち的には困ったんだけど、前回書いた「監視キャラ」はGM用のクライアントソフトではなく、通常のクライアントソフトで起動していたので全画面強制じゃなくなって安心したっていう。升erが某プロテクトの回避方法を編み出したおかげでGMの通常業務が助かったっていう、あ、これで問い合わせにくる升er報告を読みながら起動できる、ってね。どんな本末転倒だよ!

余談ですけど、ぼくの大好きな仮面ライダーという作品は、ショッカーという悪の組織に改造された本郷猛という男が、人間では無くなってしまった悲しみを背負いながらも、その力をもってショッカーをはじめとした悪を打ち倒す物語なのですが、主人公も倒すべき組織(の怪人)も「同じ源泉をもった力を振るう」という特徴があります。升erから得た力(解析した窓化)をもって升erを追い詰めるGM! 超かっこいい!

……って言いたいところなんですが。

ある晩、問い合わせに「シロンでチートが暴れてる!」っていう通報があったんですね。ライムやエリム(どちらも人が多く集まるところです)ならともかく、シロンはコミュニティというよりほぼクエストやダンジョンのために訪れる場所だったので、監視キャラは立ててなかった。なので、直接GMキャラで赴くわけだけれども……

はて、チートをしているキャラクターもいなければ、その痕跡であるルビーや水晶を撒いた跡もない。一体どういうことなんだろう、と近くのプレイヤーにチャットで声をかけたりしていると、
「いたいた」
とチャットで声をかけられる。
「あ、通報していただいた方でしょうか。あの、チートしているキャラは一体どこに……」

GM自体が珍しいこともあって、いろんなキャラが集まってきた。
みんな初期装備だ。初心者さんには珍しいのか、な、と思ったその時だった。
「ティロリンッ!」という音がし、それを合図に、ぼく(GM_Sionic)を囲んだキャラクターが一斉に、ルビーを噴出しはじめた。

GMを囲んでの大ルビー噴水祭。
一言で言えば、ニセの通報に「ハメられた」。というわけだ。
そう、初期装備のキャラばかりだったのはBANされても惜しくないように、わざわざこのために作ったキャラだったのだ。

「祭だワッショイ!」
「ルビー祭だ!」

チャット欄が心ない言葉で流れていく。
大慌てで、ぼくはルビーを撒き散らしているキャラにカーソルを合わせてはキャラ名を書き留め、GMツールを起動し、あるいはGM_Bangdollに依頼し、エンジニアにもお願いして、キャラを叩き落としたりしていった…… 数日前と同様、再び涙目になりながら。

その後も某プロテクトは何度か強固になって(実装され直して)いったのだけれど、オープンβ中に「ルビー噴水」を根絶することは、確か、できなかった。根絶ではなくて、事後対処が早くなっていったという感じだ。だが、少なくとも、数は減った。技術の勝利ではなく、こまめに対応していったことにより、チートをする「コストが上がった」から減ったというわけだ。

とはいえ、いつルビーが噴き上がるかわからない。例の「一桁台」のGMがフロアから一人もいなくなるのは避けたいところである。しかし、そういう時こそ試練はやってくる。

「澤さん、今度雑誌の取材があるんですけど、一緒にどうですか、鍋つつきながら対談みたいな感じってことなんですけど、澤さん喋るの上手いから」

GM_Kabraからの誘いである。ぼくは喋るの上手いかもしれないけど、GM_Kabraはぼくを使うのが上手い……

実は、大手PCゲーム雑誌『LOGiN』は、クローズドβ以前から『Seal Online』を猛プッシュしてくれていて、広告費にお金が回るような状況じゃなかったGBMにとって、大事な誌面をSealに割いてくれるメディアは稀有な存在だった。
冗談やお世辞じゃなく、足を向けて寝られないとさえ思っていたし、実際、ぼくの家から当時エンターブレイン社のあった三軒茶屋は北の方角にあって、ぼくは北枕に直したのだ。

そんなわけで、浅草橋から総武線で西へ何駅かの街で、鍋をつつきながらの取材が行われた。
浅草橋に残ったのはGM_TeraphyとGM_Bangdoll。夜勤でGM_Gazzaが出てきてGM_Seraphimと交代、という段取りだったと思う。万一、ルビーが噴き上がっても万全だ。

しかし、予想を超えたある事が起こり、GMチームは危機を迎えてしまうのである……

(気が向いたら、続きを書きます)


Seal the Love! Seal the Forever! -8-

2014年6月27日(金曜日)

さて、『Seal Online』日本版の運営終了をきっかけとして、10年前のことを(今後思い出すきっかけは無いだろうし)書き綴っておけというコンセプトで、気が向いたら続きを書くなんて言いながら9回め。毎日何かしらの文章を書く、という習慣付けをやりたかったのでそれなりにやってます。

-7-の記事に画像を一つ追加しておきました。2004年の成人式イベントのときのスクリーンショットです。縮小してしまったのであれですが、中央付近に「モバイダー」というキャラがいるのが、ぼくです。

そして、今このブログエントリ、昨日公開したかったんだけど、丁度、書いてた2014年6月25日の報道で、オンラインゲームに対してのチート行為を行っていた三人組が「電子計算機損壊等業務妨害」で書類送検された、というのがあったんですね。ネットでも話題になってた。(下記リンク参照)

「サドンアタック」でチートツール使用者3名が電子計算機損壊等業務妨害容疑で書類送検

で、そもそも今回は「ルビー噴水」のことがネタなわけで、ちょっと日和って、一日おいて見なおしてからヤバい部分は編集した(笑)。なぜなら、当時実際にチートが蔓延したときに「どうやってそれを再現し、防いだか」みたいなことを書いたわけから、あんまし細かく書くと、それに興味をもった人が(いないとは思うけど、まったくいないとは限らない)他のゲームで真似したらイヤじゃん、っていう。お、塩肉、案外常識人じゃん。いやぁ、それほどでも(何の寸劇だよ!)。

ルビーチートをテスト&ルビー回収してたときのスクショ

ルビーチートをテスト&ルビー回収してたときのスクショ

そんなわけで、画像は、「ルビー噴水」事件のあったあたりの日付のスクショです。アイテム欄がルビーで埋まっているのは、生成する実験をしたり、あるいはフィールドに転がっているルビーを回収したから。

知らない人もいると思うので一応ざっくり書いておくと、『Seal Online』の世界で、武器や防具といった装備品をアップグレードするためには、水晶やルビーといった宝石アイテムを消費する必要があったんですね。そして、装備品の能力値が上がり、名称に「+1」やら「+3」やらの数字がついていく。水晶でアップできる「+3」までは、失敗自体がなかったりするのだけれど、その先にルビーを使うようになってからは、失敗したり、失敗と同時に段階が下がったりという要素が加わり、まあ、簡単に言えば「なかなかうまくいかないのでルビーばかりが消費されていく」みたいなシステムになっていた。

プレイヤーキャラ同士で取引をすることができる「露店」なんかでも、ルビーは高値安定という感じで、需要は無くならない。なんだかんだと手に入りにくいということ含めて「バランス」が保たれているこの世界で、ザックザクとルビーが「出土」してしまったら……

突然ですが、Windowsというのはマルチタスク可能なOSです。PCのウィンドウでソフトウェアに何かを処理させながら、別のウィンドウでもソフトウェアを動かし…… ということが可能。つまり、『Seal Online』のウィンドウでゲームをしながら、別のウィンドウでSealの通信内容を改ざんすることも可能、というわけでして。

初期の『Seal Online』はウィンドウモードでの起動ができるようになっていたんですね。そして、別のウィンドウで起動したツールによって、Sealが行っている通信内容を書き換える(具体的にはSealの操作と通信を対応させるマクロを組む必要があった)ことで、サーバーに虚偽の状態を通知し、誤動作させ、プレイヤーに有利なゲーム結果(アイテムを獲得した、敵を倒した、など)を引っ張りだすことができたっていう。

画像は縮小したのでちょっとわかりづらいかもしれないけれど、チャット欄が「a」という一言で埋め尽くされている。これは「a」と発言したら、ルビーが自分のキャラから「ティリンッ!」とドロップされ、それを自ら拾うという一連の動作でDUPEしていたからなんだけれど。

さて、単に一人のチーター(「升」とか「升er」って表記したのも懐かしい)がコソコソやってたならここまで大きな問題にならなかったのだろうけれど、あまり良くない意味で、これらは『Seal Online』の歴史に刻まれる事件になってしまったのだ。

このDUPE、あまりに簡単にできてしまいすぎた。2ちゃんねるにその方法が書き込まれるや、多くの人がやり始めてしまった。しかも、ルビーを手に入れて『Seal Online』内で使ってどうこうしようというよりも、愉快犯的に人が集まってる場所で「ティリンッ!」「ティリンッ!」「ティリンッ!」と連続DUPEをするタチの悪さ。

このとき、ルビーがキャラの頭の上から連続して湧き出るように見えるから「ルビー噴水」。このキャッチーでセンセーショナルな言葉が、もはや歴史に刻まれるに値する事件であることを示しているとは思わないかね? (思わねーよ!)

「ルビー噴水」が「発生」すると、問い合わせのメールがドンドコやってくる。もちろん、人が多い場所に立たせっぱなしにしておいた「監視キャラ」の画面内にも、そんな感じでルビーが撒かれている状況が表示される。敗北を感じる瞬間ですわ。

先日も書いたけれど、GMコマンドで「透明になる」なんて便利なものは当時なかった(あるいは日本の運営には教えられてなかった)から、何台かのPCで「監視キャラ」を立ててたんです…… そして、もう一つ言えば、キャラを蹴りだすGMコマンドも同様で…… そんな感じだったのでチートをしているキャラが発見できても、対応が後手後手に回ってしまう状況。

チートしてるキャラは、GMが現れるとスッとログアウトしてしまうので、「監視キャラ(一般キャラ)で近づいてキャラ名を確認する」→「キャラ名をぼくやGM_Kabraに大声で伝える」→「そのキャラのパスワードをGMツールから強制的に書き換える」→「エンジニアがデータを操作して、そのキャラクターを強制ログアウトする」なんてまどろっこしいことをやっていたわけだ。でも、プレイヤー一億総チーターみたいな状況で、そんなので追いつくわけもない。

技術的にチートが塞がれない、GMたちもすぐにチートキャラを追放できない、まごまごしているうちに、当時ポピュラーだった2ちゃんねるのスレは運営批判でいっぱいになり、チートに嫌気がさしたプレイヤーが辞めていく……

監視キャラをトコトコ走らせながら、ルビー撒いてるヤツの名前をメモして、エンジニアに伝える。一体何なんだこの非効率なチート対策は。こんなことをしていたら『Seal Online』は数日でメチャクチャになってしまう。

そうやって、涙目になりながら「ルビー噴水」を追いかけるGMたちを見て、立ち上がった男が一人、いた……
そう、あの「-Zero-」で登場した、サーバーを韓国の開発元まで担いで行った(担いで行かされたとも言う)エンジニアのCさんである。

エンジニアのCさんは、それまでチートキャラのキャラ名をコマンドラインで入力しては「叩き落とす」というのをやっていたのだが、おもむろに画面内にコンソールのウィンドウを4×4の16個、出現させた。
16個のウィンドウは、1-1、1-2、2-1、2-2(当時は2サーバー、各2セレクトであった)のそれぞれ4つの区域を示している。1つの区域はなにかというと、いくつかのフィールドや街やダンジョンが束ねられていて、まあ、まとめて管理してるわけだ。逆に言うと、「マップ落ち」をする場合は、この区域ごとに落ちるって寸法。

で、この16個のウィンドウに、それぞれどのキャラが何をしたみたいな通信が、ダーッと流れる(いわゆるログですね)。それこそ同時接続は1万人はゆうに超えていたので、すごいスピードで流れる。

「ルビー噴水」が行われるときは、特徴ある文字列の固まりがこれまたダーッとやってくるから、それをエンジニアのCさんは目で追って、もう1基のPCでカチャカチャとコマンドを打ち、そのキャラクターを「叩き落とす」。つまり、GMがゲーム内で目視して、ってのをふっ飛ばしたわけだ。そして1時間ほど経って……

「ほとんどチト、見えなくなりました」とエンジニアのCさん。

もぐら叩きもいいところのイタチごっこをやって、チートしていたプレイヤーも諦めたというわけだ。「すごいよCさん!」

だが、その平穏も長くは続かなかったため、翌朝、ついに「あれ」が登場することになる。そう、「絶大な」効果を発揮すると鳴り物入りで『Seal Online』に組み込まれた…… 「nProtect」、である……

(気が向いたら、続きを書きます)


Seal the Love! Seal the Forever! -7-

2014年6月25日(水曜日)

書けば書くほど思い出すけれど、何らかのトリガーがないと、思い出せないこともある。そんな8日目。

例えば、GMは内々に番号が振られていて、それを思い出したのは今しがただ。GM_Kabraが01、GM_Bangdollが02、そしてぼくが03。つけかたのルールは忘れてしまったけれど、ぼくよりも前からGMをやっていたGM_Seraphimは10番でGM_Teraphyが12番だったので、入社順でつけているとかではなかったのだと思う。

さらに、芋づる式に思い出したことがあって、日本版のGMはオープンβ時に、いわゆる「GMコマンド」というやつを開発元からほとんど知らされていなかったという事実がある。「GMコマンド」というのは、GMがキャラクター操作を使うときにだけ使える特殊なコマンドだ。これが2つしか、知らされていなかった。

当時、開発元は「まだ日本の運営チームは信用できないから」と言っていたみたいで、そんなことをGM_Kabraが教えてくれた。「ハァ?」って感じだ。運営するのに必要なコマンドが知らされないというのは、信用とかそういう問題とは別次元の気がするが、とにかく2つだけ。

2つのコマンドは、「座標を入力してそこへGMが移動する」ものと「キャラクター名を入力してGMのところに呼び出す」もの。この2つで何をしろ、と思うかもしれないが、なかなかどうして、そこそこの使い方ができた。

例えはよくないかもしれないが、チートをしたプレイヤーに対してBAN(アカウント停止)的なことをするために、まず「ザイドの端っこの座標を入力してそこへGMが移動」した後、「チートしたキャラクター名を入力してGMのところに呼び出す」とする。そうすると、呼び出されたキャラクターはそこ一帯から出られなくなる。

知らない人のために補足しておくと、ザイドは雪に囲まれた街マップであり、端っこは小高い山状になっていて、通常は登ったり降りたりすることができない。正式サービス後はイベントの待機場所などとして伝統的に使われるようになっていたが、もともとはザイドの端が、いわゆる「監獄」として懲罰的な使われ方をしていた、というわけだ。

ザイドの端に呼び出されると、そのプレイヤーキャラはログアウトしたあとにログインしなおしたとしても、辺り一面の白銀の世界をウロウロするしかないし、チャットの文字も街には届かない。

そういう飼い殺しみたいなことをやっておいて、一段落したら「GMツール」で「対象のパスワードを変更する機能」を使ってしまえば、二度とログインできなくなる。ほぼBANみたいなものだが、まあなんともまどろっこしいやり方をやっていたものだ。

だが、一人二人ならまだしも、何人もが悪さをし始めると、そんな手間のかかるやり方ではまったく対応ができなくなる。

「GMコマンド」とは別に専用ソフトで「GMツール」というものがあった。このツールを起動すると、これにもログインする必要があって、ログインしたGMによって(GM番号によって)使える機能に差が出る仕組みになっていた。権限分けがされていたのだ。

しかし、この権限分けもあまり実際の運営業務に則したものにはなっていなくて、例えば「プレイヤーが今どんなアイテムを持っているか見る」という作業があったとする、チートキャラの所持物を調べるというような地味な作業だ。GM番号が二桁台のGMがそういう作業をしようとしても、ツールはうんともすんとも言わないので、一桁台のGMに頼んで見てもらうしかない。一桁台のGMは生息数(汗)が少ないので、そこで作業が止まってしまうこともあった。

かといって、GMをみんな一桁台の番号にしてしまうと、「アイテムを発行する機能」「BANする機能」「対象のパスワードを変更する機能」その他の、操作を間違うと致命的になってしまうような機能もセットで使えるようになってしまう。「閲覧のみ」という権限がなかったわけだ。まあ、そのへんは開発ポリシーでしかないので、何が良いというのでもないのだろうが、それにしても不便極まりなかった。

そういう改善点が明確にありつつも、運営ツールはあまり更新されなかったので、その後Webエンジニアがデータベースのコピーから、プレイヤーのデータを閲覧したり、統計や過去のログをある程度とれるようにしてくれた。リアルタイムで動いているサーバーとはタイムラグがあったが、調査業務などには充分すぎるくらいだった。開発元に黙ってそんなの作っていいのか、というところではお互い様か、と思っていたけれど(汗)。

Seal Online2004年成人式イベント

Seal Online2004年成人式イベント


そして1月12日、成人式イベントでは会場に多くのプレイヤーが集まり、いわゆる「マップ落ち」が頻発したことで大変な混乱が起こった。

最終的には「GMツール」を使った全体告知とアイテム(セゲルだったと思う)配付などが行われたが、これにも問題があって、ツールからある一定以上のプレイヤーに何かを配付しようとすると、ツールが途中でハングアップするという、よくわからない状態になった。

しかも、途中で異常終了したように見えても、残ったプロセスが律儀に配付を続けていて、「あ、落ちた!配りなおさなきゃ!」をやると、二重に配ってしまうことになる上に、異常終了だと配付に関するログも出てこないという素敵仕様。お決まりのように、テストサーバーでのチェックでは出てこなかったんだこの問題が。

そういうトラブルも含め、運営用ツール類もβテスト期間なのだと言ってしまえばそうだが、テストされていたのは運営メンバーもまた然り、なのである。

成人式イベントの反省を活かすという意味でも、汚名返上のGMイベントが開催されることになった。
プレイヤーをひとところに集めてはマップ落ちしてしまうので、色々な箇所をスタート地点にしてGMが先導し、フィールドに一定数以上の人数が留まらないようにしながら移動していく、という「マラソン」イベントである。

「澤さん、GMネーム決めてもらっていいですか?」マラソンイベントを二日後にひかえ、GM_Kabraは言った。
「GMネーム? なんで? サポート返信だったら、借りてるIDで間に合ってるよ?」
「今度マラソンイベントをやろうとしてるんですけど、時間的に一人足りなくて、お願いします。それに、サポートでキャラ調べたりするのにも必要ですよね、ちゃんとしたGM番号」

当時ぼくは使われなくなっていたGM番号(誰が返信したのかがわかるようにするため)を借りてカスタマーサポートを手伝っていたのであるが、専用のGM番号を割り当ててもらうことになったのである。

その頃、Kさんが勝手にぼくのことを「澤さんは当社の役員になりましたんで」と触れ回っていて、ならばとGM_Kabraのはからいで一桁台の03が割り当てられることになった。そして、GM専用のゲームクライアントと、「GMコマンド(といっても前述の2種類)」、そして「GMツール」がぼくのPCにインストールされた。

「GMネーム、決まりました?」考える時間も与えないようなスピードで、GM_Kabraが聞いてくる。

「じゃあ、Sionicで。ソニック(=sonic)、みたいな感じで」
あまり熟考しなかった。ほんとうに適当に決めてしまった。

「はい、登録しておきますね。そのGM番号でログインして、キャラ作ってもらっていいです? それをGM化するんで」

みなさん、お待たせいたしました、GM_Sionic誕生の瞬間。

GM_Kabraから、キャラクターの扱い方、振る舞い方、そして「GMツール」の使い方のレクチャーを受ける。
ぼくはGMツールを「すげー、こんなことができるのか」という興味でいじり倒していた。

だが…… もう一度書こう。貧弱なツールでは「何人もの悪さ」への対処は難しい。
その頃、シィルツでは、じわじわと闇の中でDUPE(アイテム複製)が広まり始めていて……

(気が向いたら、続きを書きます)


Seal the Love! Seal the Forever! -6-

2014年6月23日(月曜日)

なんと7回目、ということは三日坊主が常のぼくでも一週間も続いてしまったということでしょうか。無事オープンβが始まったと思いきや…… GMたちは満身創痍だったんです。このへん、だんだん思い出すのがきつくて筆が(キーを叩く手が)鈍ります;;

クローズドβ開始以降の激務が祟ったのだろう。寿司をつまむことなく倒れたGM_Gazzaは、その後病院で診てもらったところ、足の古傷の痛みが再発したとのことで、(年末年始ということもあるし)当分の間は休養ということになった。

クリスマスが過ぎ、年末ムードの中、サーバーオープン自体は無事に済んだという安堵感もあったけれど(まあ、マップ落ちはしょっちゅうあった)、それ以上にみんなの体力は限界を迎えていたし、冬の締め切ったフロアに詰めていたら風邪の一つや二つ簡単に広まってしまうわけで。あろうことか、インフルエンザが流行ってしまったのだ。

ぼくは「○○は風邪をひかない」の例えどおり、インフルエンザにも風邪にも無縁だったけれど、オープンβの開始から一週間ほどの記憶がほとんどない。まだGMではなかったのと、いろいろ首を突っ込んではいたものの、どう逆立ちしてもGBMの社員ではなかったので、本来の会社の仕事をしていたような気もする。上司が気を遣ってくれて、ぼくはすこしの間、ゴタゴタのありすぎる浅草橋から離れていたような、そんな感じだったんじゃないかと思う。

とはいえ、折に触れ浅草橋に顔は出していて、作業を手伝ったりもした。
βテストに参加していたプレイヤーさんは知っているかとと思うけれど、2004年の正月に、GBMは住所を登録してくれていたプレイヤーに年賀状を出した。この宛名シール貼り(うーん、直接印字されたものへの切手貼りだったかもしれない。手元に印字済みのがないので確認できないのだけれど)がまた難儀だった。

普通、DM発送をしてくれる業者に住所リストとかハガキとかを渡せば、機械的にパッと印刷から発送までできそうなものだが、なにしろ登録された住所は「ナメック星」やら「ペンギン村」やら「ムーミン谷」が多数を占めている。そんなデータは渡せない。ならばデータの状態で加工すればいいのに、ぼくが知ったときにはなぜか宛名が印刷済み。さらに、目視で「これはないわー」という住所や、番地の書いていないものは除外しなければならない。こういうの人海戦術っていうのだと思うけどエンジニアでもGMでも経営陣でも助っ人のぼくでも、とにかく交代で黙々とやっていったのである。

で、そんな作業を何日か続けているうちに、先述のインフルエンザで一人欠け、二人欠け、大晦日までの間に、稼働できるGMはなんとGM_Kabra、GM_Bangdollの2人だけになってしまっていた。24時間体制のオンラインゲームで、オープンβ開始直後という大切な時期にこれでは、ほんとうにサービスを維持するのは難しい。

技術の要となるエンジニアは、トラブルがなければということで年末年始は自宅待機。といっても歩いて数分のところに一室を借りてそこに3人(Webプログラマ、ネットワークエンジニア、サーバーエンジニア)が住んでいるという、今で言えばシェアハウスみたいな状態だから、トラブルがあればすぐ駆けつけてくれたし、技術的な安心感は比較的大きな印象があった。

とはいえ、GM2人。当時は、ゲーム内のサポートだけでなく、お問い合わせメールも全てGMが返信していて、そりゃ10万人近くのプレイヤーがいれば、同時接続は1万人くらいあるし、問い合わせはひっきりなしに届く。バグやらスタック(フィールド上で動けなくなる)やら、グラフィックボードの相性で動く動かないみたいな話題がドンドコ届く。返信しても返信してもどんどんメールが溜まっていく。GMだって食事もすれば仮眠も取りたい、でも2人は同時に外出できない(事務所がカラになってしまう)し、八方塞がりだったのである。

そういうときに、なんか心配になって顔を出してしまったぼくがいて。あとはわかるな? そう。
「澤さん! ちょうどよかった! 手伝ってください!」

二年参りして初詣もしたかったのだけれど、そんな時間はとれないので、12月31日の夜、ぼくは当時付き合っていた彼女(今のカミさんです)と巣鴨のとげぬき地蔵にお参りをして、彼女をほったらかして浅草橋へ出向いた。

2003年から2004年に切り替わる時、ゲームの中でカウントダウンをやっていたような気もするけれど、たぶんオペレーションしていたのはGM_Kabraで、ぼくは除夜の鐘を聞きながら、GM2人の夜食をコンビニに買い出しに行ったりしてた気がする。

1月2日、夜にKさんか誰かが来たので、留守を任せて、三人で浅草橋の駅近くの「日高屋」に行ってラーメンとチャーハンと餃子を食べたのを覚えている。あれだけゲームの仕事をしているのに、やっぱりゲームの話をしていた。「Bangdollの名前って『聖剣伝説』が元ネタ?」とかそんな話もしていた気がするけど、どうにも細かいところは覚えてないものだね。

大晦日から1月3日の朝まで、いわゆる正月返上ってやつでぼくらは手当たり次第にメールを返していった。ぶっちゃけ、帰ってない。いきなり手伝わされた感がありつつも、メールによるカスタマーサポートの経験はあったので、返信用のシステムに慣れるのも時間の問題だった。毎日1000通、延べ3000通。 回答用テンプレが使えたにせよこれを3人で、つまり一人1000通を三ヶ日で片付けた! ということになる。

GM_KabraとGM_Bangdollはゲーム内の巡回もしたりしながらだから、ほんと、人っていうのはやればできちゃうものみたい。1月3日の昼か夕方に出勤してきたのは、たしかGM_SeraphimかGM_Teraphyだったと思うけれど、年末からの返信履歴を見て「これ、3人で返しちゃったんですか?」と驚いていた。当時、「ドヤ顔」なんて言葉はなかったけれど、ドヤ顔だったと思う。そして、ぼくら3人はそれぞれ眠りにつくために帰ったのだが……

目が覚めると1月5日だった。なんてことだ。岩本町(ぼくの所属していた会社)に昼ごろ出勤したわけだが、仕事始めはとっくに済んでいて、このところ浅草橋に入り浸りだったこともあり、若干肩身が狭い感じもした。

そこへ、ぼくの上司が「誕生日、おめでとう。何歳になったんでしたっけ?」と、手のひらに少し余るくらいの大きさの箱を取り出した。
「あ、え……28に、なりました」
1月5日はぼくの誕生日。いつだったか誕生日の話をしたのを覚えていてくださったのだろう。ぼくは箱を受け取って、「開けていいですか?」と聞く。「そんなたいした物じゃぁないよ」と上司は笑った。

開けると、そこには皮の財布が入っていた。ぼくは、今もそうだけど持ち物に無頓着なほうなので、それまで使っていた財布はとんでもなくボロボロだったから、それを見てのチョイスなのだと思う。ちょっと驚いた。
あいにく、この財布に入れるお金は、あまり持ちあわせてなかった。

さて、ここまでずっと書いてきた中で、ぼく以外の人物については、GM名かイニシャルかで話を進めてきた。でも、唯一「ぼくの上司」という呼び方だけが特殊だったことに気づいた人もいるかと思う。どんな人物だと思う?

数奇な運命ってのはこういうところに潜んでいるんだって、いつも思うけれど、この当時の「ぼくの上司」こそ、現WemadeOnline(日本版『SealOnline』の最終的な運営企業)のJ.C.社長だ。この時はまさかそういう巡りあわせになるとは誰も、微塵も思わなかっただろう。そういう歴史(大げさですが)が作られるには、まずぼくがGMになり、社長になり、そしてさらに1年半ほどして社長を辞めて、さらにぼくのよく知らない経緯を超えて…… という流れを辿る必要があるからだ。

そんなわけで、ついに幕を開けた2004年、GM_Sionicが誕生する日は、案外早く、来た。

(気が向いたら、続きを書きます)