ゼロから始めるオンラインゲーム規制

2016年11月20日(日曜日)

気になった記事がありましたんで。

先週、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する質問主意書」を提出しておりました。本日、閣議決定を経て答弁書が返ってきました。そのまま掲載します。あまりコメントは加えませんが、結構、画期的な事が書いてあるような気がします。

引用元:緒方 林太郎2016年11月18日 10:15質問主意書(風営法)

ぼくはゲーム業界において、ゲーム設計やゲーム運営としてのRMT対応(対策でもなければ、研究でもないです)についてはそれなりに年季が入っているんですけれど、刑法(賭博)や風営法については関連して資料を引いて確かめながら解釈していったり、法律の専門家に頼らなければならない立場です。

その上で、ピンとくるものには様々な思考をして、何が起こっても良い状態にしておかなければならない。

今回引用したのは、緒方 林太郎さんという議員のブログです。ぼくはこちらの方にお会いしたこともないし、記事を読んだだけなのでどのような活動をしている方かもよく知らない。

(人的な関係性や思想への影響や支持の有無なり可否なりを断り書きしておかないと、ネットはほんとうに面倒くさい方向から斧やマサカリが飛んでくるんで、一応)

こちらの方が質問主意書を提出したところ、答弁書が返ってきたという内容なのですが、リンク先から読んでいただくとして、気になったのは下記です。

六 ぱちんこ屋で景品を得た後、その景品を金銭に交換している現実を政府として把握しているか。

七 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定されるぱちんこ屋は、刑法第二編第二十三章における罪の違法性を阻却する必要はないのか。

(引用元:同上)

ぱちんこに関する質問なので、それ以上でも以下でもない感じです。「ぱちんこの景品が換金されてるのわかってんの?」「(わかってるなら)ぱちんこ屋は、賭博罪の違法性を阻却する必要あるんじゃないの?」ということです。賭博については下記。

(賭博)
第185条 賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
(常習賭博及び賭博場開帳等図利)
第186条 常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。
2 賭博場を開帳し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
(富くじ発売等)
第187条 富くじを発売した者は、二年以下の懲役又は百五十万円以下の罰金に処する。
2 富くじ発売の取次ぎをした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
3 前二項に規定するもののほか、富くじを授受した者は、二十万円以下の罰金又は科料に処する。

(引用元:第2編第23章 賭博及び富くじに関する罪

「違法性を阻却する必要」というのは、ここでは「法令に基づいて行われる行為や社会通念上正当な業務による行為にする必要」と言い換えても良いかなと思いますが、「ほっといたら賭博でしょ。これ法令に基づいてるから大丈夫、ってことにしておかなくていいの」っていうことです。で、答弁が下記。

六について

客がぱちんこ屋の営業者からその営業に関し賞品の提供を受けた後、ぱちんこ屋の営業者以外の第三者に当該賞品を売却することもあると承知している。

七について

ぱちんこ屋については、客の射幸心をそそるおそれがあることから、風営法に基づき必要な規制が行われているところであり、当該規制の範囲内で行われる営業については、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百八十五条に規定する罪に該当しないと考えている。

引用元:緒方 林太郎2016年11月18日 10:15質問主意書(風営法)

「ぱちんこの賞品が売却されてるの承知してるよ(景品が換金されてるの知ってるよ)」まあ、はい。知ってるんですね、くらいの印象。そして次なんですが、「風適法の規制の範囲内で行われているので賭博に該当しないと考えてるよ」というところです。これは読み取り方なんだろうけれど(解釈が一つしかない答え方なんて危険だからしないでしょう)ぼくは「“あらためて”罪の違法性を阻却する必要ないでしょ、すでに風適法規制の範囲内なんだから」と読みました。

さて、積極的に騒いだところで話題として消費されてしまって落とし所が見えないまま語られる危険性が高いので慎重に書きますが。上記のぱちんこの例をもって主客を入れ替えたり対偶をとったものが必ずしも真ではないとは思いつつ下記。

『電子くじで得られたアイテム等を換金するシステムを事業者が提供しているような場合や利用者が換金を目的としてゲームを利用する場合は、「財産上の利益」に該当する可能性があり、ひいては賭博罪に該当する可能性が高くなると考えられる』という話題(内閣府第233回 消費者委員会本会議『スマホゲームに関する消費者問題についての意見 ~注視すべき観点(案)~』)が出たばかりの「オンラインゲームとRMTの関係」について、おかしな方向へ議論が進まないことを祈ります。

おかしな方向というのは具体的には『風適法等何らの規制のないオンラインゲームに換金手段があるとしたら、風適法の規制の範囲内で営業しているぱちんこと違って、まさに賭博である』という乱暴な議論や、この乱暴な議論をもって「オンラインゲームは賭博について罪の違法性を阻却する必要がある業態で、何らかの法の規制の範囲内で営業を行わせるべきだ」とさらに逆に論を積み上げていくことです。そんなものは論とは言わない。今のうちに言っておくが、そういうことを言い出す者がいたら、明らかなる言いがかりで頓珍漢である。

この点で、今一度、「オンラインゲームが先にあり、ゲーム事業者をさしおいて、ゲームの外側で換金することを生業とする者がいる」ことの不自然さをまず広く知らしめ、是非を問うところからやり直すべきではないかな、と思います。

ソーシャルゲーム(オンラインゲーム)のガチャがRMTと併せ技で賭博法に抵触の可能性について(追記あり)

やまもといちろうオフィシャルブログ 2012年3月7日

メーカー vs. 業者。RMTがはらむ問題と可能性をめぐる座談会

4Gamer.net 2006年4月6日

そして来年(2017年)、改正された「資金決済に関する法律」の施行となりますが、「仮想通貨交換業」という定義に対して、幅広い解釈をしてお墨付きを得たとばかりに「ゲームアイテム換金事業」へ特攻していく者が現れるのかどうか、という感じもしています。どんな感じかを二文字で表わせとなると、「憂鬱」でしかないのですが。

もちろん「前払式支払手段」と「仮想通貨」はそもそも違うわけですが、ゲームアプリ内のアイテムが資金決済法に基づく供託金対象となったというニュースも含めて考えると、その境界はケースバイケース、曖昧模糊としたものということでたかをくくるのは簡単ですが、線を引かれるときは一瞬です。

別に仏の顔が三度のイエローカードの後に鬼になるわけではないんです。人間の顔は、理性的で論理の整った思考とは無関係に、利害や名声や嫉妬や親同胞(おやはらから)を人質に取られたような出来事で、ぱっと変わるようなものなんです。

というわけで、オンラインゲーム規制の足音は随分前からひたひたと聞こえてきていたところに、特に今年に入ってから、ゲームへの愛情の薄い人々によって、盛大にドッカンドッカンと地雷が踏み抜かれており、その度に飛び散った瓦礫で外堀が埋め立てられていっているという状況を書いてみました。

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