Seal the Love! Seal the Forever! -9-

例えば、あなたが「この盾はね、どんな矛でも防ぎますよ」って商人に言われたら、とりあえず、木の枝とかでつついたり、軽くコンコン叩いたりするじゃないですか。「どんなものでも貫く矛」で試す前に。

で、コンコン叩いたら、すぐ壊れて何も防げなかったんですよ。某プロテクト、ってソフトウェアなんですけどね。そこから始まる10回目の思い出話記事です。

なにしろ告知に「絶大な」とか書いちゃったわけです。新たに組み込まれたこの仕組は完全にチートを防ぐ、と。こいつは威力があるぞ、と。

……ところが、そこに待っていたのは、「全画面モードでしか起動しない『Seal Online』」と、「起動中のアンチウィルスソフトやメッセンジャーソフトさえ叩き落とそうとして巻き添えを食らってOSが落ちる」という阿鼻叫喚の地獄。

そして、すぐ2ちゃんねるで突破方法が晒されましてね。晒された手順でさらっと突破できるようなチートに慣れたプレイヤーに対してはなんの効果もなく、突破方法なんか知るよしもない(2ちゃんねるなど見もしない)フツーのプレイヤーが大迷惑。PCのOSは落ちるわ、アンチウィルスソフトとコンフリクトして固まるわ、挙句の果てに起動しなくなるわ、って一番損をしたっていう。

この某プロテクトが破られた当時の手法は、まず全画面モード固定になっているのを、ウィンドウモードができるようにする(窓化)ところから始めるというものだった。これは何か起動時のコマンドラインに引数をつけるんだったか、バイナリエディタでどこかのアドレスを潰してチェックしないようにするんだったか、その両方だったかで回避できて、ウィンドウモードにできたら、起動している某プロテクトのプロセスをKillするとかだった気がする。

プロテクト用ソフトウェアだからといって、他のソフトを叩き落とすとかほんと行儀悪いんだけど、この時のバージョンは案外あっさりと自分自身が叩き落とされるみたいなお茶目なソフトで、それはそれとして後にプロセスもKillできない行儀悪さMAXのバージョンにまで行き着くと、起動時にバーン! って盾だか矛だか(攻撃しないんだから矛ってことは無いか)のロゴまで出てくるんだけど、行儀が悪かろうが毒をもって毒を制すぜ! そこまでしないともはやチートの一個や二個防げねーんだぜ、ドヤァ! という開き直りが感じられてある意味潔い。

そんな感じで試しに2ちゃんねるに書いてあった方法をやったら、すんなりできてしまって、気持ち的には困ったんだけど、前回書いた「監視キャラ」はGM用のクライアントソフトではなく、通常のクライアントソフトで起動していたので全画面強制じゃなくなって安心したっていう。升erが某プロテクトの回避方法を編み出したおかげでGMの通常業務が助かったっていう、あ、これで問い合わせにくる升er報告を読みながら起動できる、ってね。どんな本末転倒だよ!

余談ですけど、ぼくの大好きな仮面ライダーという作品は、ショッカーという悪の組織に改造された本郷猛という男が、人間では無くなってしまった悲しみを背負いながらも、その力をもってショッカーをはじめとした悪を打ち倒す物語なのですが、主人公も倒すべき組織(の怪人)も「同じ源泉をもった力を振るう」という特徴があります。升erから得た力(解析した窓化)をもって升erを追い詰めるGM! 超かっこいい!

……って言いたいところなんですが。

ある晩、問い合わせに「シロンでチートが暴れてる!」っていう通報があったんですね。ライムやエリム(どちらも人が多く集まるところです)ならともかく、シロンはコミュニティというよりほぼクエストやダンジョンのために訪れる場所だったので、監視キャラは立ててなかった。なので、直接GMキャラで赴くわけだけれども……

はて、チートをしているキャラクターもいなければ、その痕跡であるルビーや水晶を撒いた跡もない。一体どういうことなんだろう、と近くのプレイヤーにチャットで声をかけたりしていると、
「いたいた」
とチャットで声をかけられる。
「あ、通報していただいた方でしょうか。あの、チートしているキャラは一体どこに……」

GM自体が珍しいこともあって、いろんなキャラが集まってきた。
みんな初期装備だ。初心者さんには珍しいのか、な、と思ったその時だった。
「ティロリンッ!」という音がし、それを合図に、ぼく(GM_Sionic)を囲んだキャラクターが一斉に、ルビーを噴出しはじめた。

GMを囲んでの大ルビー噴水祭。
一言で言えば、ニセの通報に「ハメられた」。というわけだ。
そう、初期装備のキャラばかりだったのはBANされても惜しくないように、わざわざこのために作ったキャラだったのだ。

「祭だワッショイ!」
「ルビー祭だ!」

チャット欄が心ない言葉で流れていく。
大慌てで、ぼくはルビーを撒き散らしているキャラにカーソルを合わせてはキャラ名を書き留め、GMツールを起動し、あるいはGM_Bangdollに依頼し、エンジニアにもお願いして、キャラを叩き落としたりしていった…… 数日前と同様、再び涙目になりながら。

その後も某プロテクトは何度か強固になって(実装され直して)いったのだけれど、オープンβ中に「ルビー噴水」を根絶することは、確か、できなかった。根絶ではなくて、事後対処が早くなっていったという感じだ。だが、少なくとも、数は減った。技術の勝利ではなく、こまめに対応していったことにより、チートをする「コストが上がった」から減ったというわけだ。

とはいえ、いつルビーが噴き上がるかわからない。例の「一桁台」のGMがフロアから一人もいなくなるのは避けたいところである。しかし、そういう時こそ試練はやってくる。

「澤さん、今度雑誌の取材があるんですけど、一緒にどうですか、鍋つつきながら対談みたいな感じってことなんですけど、澤さん喋るの上手いから」

GM_Kabraからの誘いである。ぼくは喋るの上手いかもしれないけど、GM_Kabraはぼくを使うのが上手い……

実は、大手PCゲーム雑誌『LOGiN』は、クローズドβ以前から『Seal Online』を猛プッシュしてくれていて、広告費にお金が回るような状況じゃなかったGBMにとって、大事な誌面をSealに割いてくれるメディアは稀有な存在だった。
冗談やお世辞じゃなく、足を向けて寝られないとさえ思っていたし、実際、ぼくの家から当時エンターブレイン社のあった三軒茶屋は北の方角にあって、ぼくは北枕に直したのだ。

そんなわけで、浅草橋から総武線で西へ何駅かの街で、鍋をつつきながらの取材が行われた。
浅草橋に残ったのはGM_TeraphyとGM_Bangdoll。夜勤でGM_Gazzaが出てきてGM_Seraphimと交代、という段取りだったと思う。万一、ルビーが噴き上がっても万全だ。

しかし、予想を超えたある事が起こり、GMチームは危機を迎えてしまうのである……

(気が向いたら、続きを書きます)

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