Seal the Love! Seal the Forever! -4-

なかなか『Seal Online』のゲーム自体のことが出てこないのでどうかなと思いつつ、当時の思い出話を綴っているシリーズ、なんと5回目です。まだオープンβに入ってねーぞ……

数日GBMの事務所を空けて、憔悴して帰ってきたKさん。「軟禁されていた」という顛末について聞くと、概ねこういうことであった。

現在の通信企業とのクローズドβテストの座組(サーバー、回線、広告など)そのままでのオープンβテストへの以降は無理。なぜなら、独占で回線契約をしている利用者にのみ『Seal Online』を提供しているからこそ、(そのゲームに魅力があればあるほど)その会社の回線・プロバイダに申し込む人が増えるメリットがあるのであって、どんな回線・プロバイダからでも接続できてしまったのでは、まったく意味がない。まあ、そりゃそうだよね、っていう。

これはおそらくKさんも予想できていたことだろうから、「ならばクローズβ終了に伴い、契約を解消」という切り札を切ったのだと思う。たぶんそこには、『Seal Online』のコンテンツ性があれば、独力でもなんとかなる、という(甘いかどうかは別として)見通しもあったか、あるいは……そして今度は先方から出てきた(当然出てくるだろう)条件をKさんは飲むことができず、揉めた、帰してもらえなかった、連日に及んだ、軟禁された、というわけだ。

このあたりは想像の域を出ないし、軟禁まがいのことを巨大通信企業がするというのは考えづらい(けど考えづらいことに限って起こることも無くもないのかもしれない)し、あるいは、後の展開を思うと、むちゃくちゃ古い例えをすれば「江川の空白の一日」みたいなものかな、と思っているし、って、この例えオッサン以外誰もついて来れないぞこれ。

余談だが、こういうことは、最初の契約時にそこまで突っ込んでおかないと大抵泥沼になる。「一緒に頑張りましょう! これからやるぜ!」というときに撤退条件の設定をするのは、「え? このプロジェクト、うまくいかないとでも思ってんの?」ということになりかねないが、うまくいくことしか考えないというほうがおかしいし、双方の遺恨を残さないためにもきちんとやる必要があるわけで、おおよそこれをしていなかったのだろう。

そして、当然解約条項の書かれた合意書について、GBM側の意向を盛り込んだ修正版を作成することになったのだが、これがまた難儀であった。とにかく削除したかったのは、クローズドβのデータについて、(持ち出しはNGにしても)コピーさえ許されない、というところだった。

パソコンのオンラインゲームは、おおむねメールアドレスだけでなく、住所氏名も登録するみたいなのが当時の文化であったわけだが、そういった個人情報を除いてもダメ。さすが巨大通信企業、「おれのサーバーに入ったデータはすべておれのもの」というわけだ。当然な気もするけど。さて、これをどう交渉するか。

ただ、このデータを渡さないって件、どうも契約解消のことが出てきて、先方が一矢報いようとして言い始めた感じがあるのだよね。ぼくが来る前に、GM_Kabraが何度か先方の担当者から「クローズドβで自分たちの役割は終わっても、ゲームのデータは渡せます」的なことを聞いていたというし。まあ、書面になっていない(契約書になっていない)ことなのだし、今となってはよくわからないのだけれどね。

この時、ぼくには誰が味方で誰が敵かみたいなものの見方は全然なかった。「韓国語で作られた修正合意書を日本語にする」って仕事をぼくはしたのだけれど、文面を見ながら、薄々「これってこっち側のチョンボをこの合意書で有耶無耶にしてるとこも相当あるんじゃね?」的な考えも浮かばなくはなかったけど……

そういったことと並行して、(これはぼくの10年前の記憶でしかないので、曖昧かつ時系列も前後しているとは思うが)おそらくその通信企業との交渉決裂も視野に入れ、オープンβの受け皿となるパブリッシャーやポータルサイト各方面への打診は始まっていたのだと思う。そういう、いわゆるビジネス大作戦っぽい動きはKさんやCさんが進めていたし、そのあたりのことはぼくの上司が綿密にバックアップしていたはず。

とまあ、「上は洪水、下は大火事、これなぁに?」っていうナゾナゾがあるけれど、
経営陣のすったもんだは4Fで。そして現場の大混乱は3Fで。

実は、GBMはクローズドβからオープンβへ「データの移行(プレイヤーキャラクター等)をします」という告知を出してしまっており、このタイミングで交渉が決裂して物別れにでもなると、データの移行はまったくできなくなる。

MMOやMOに関して言えば、クローズドβでのキャラリセットはよくある事だったのだけれど、「リセットしない」ということがプレイヤーモチベーションに繋がるのも事実なので。

ぼくにもそういうことはよくあった(開発が言うスケジュール通り実装されると信じるしかないし、それを告知したけど守れなかった、みたいなのは典型)けれど、「状況がコロコロ変わって当たり前」なのはあくまで運営側が腹をくくるしかない問題で、プレイヤーにはそんな腹など関係のないこと(変わってもらっちゃ困ること)だ。

そこでデータ移行ができないことについて本当に心を痛めていたのはGM_KabraはじめGMのメンバーだ。この頃の3Fは本当に殺伐としていて、データが移行できないとわかりつつ、オープンβに期待を膨らませるプレイヤーと対話しなくちゃいけないGMは本当に辛そうだった。

余談その2。たぶん古いSealのプレイヤーは気づいているかな、GM_Nashの名前がこの一連のぼくの思い出話にはほとんど出てきていない。
その理由なんだけれど、この頃からだんだん彼は出社しなくなっていて、ぼくは顔を合わせたこと数回しかないからだ。当時は、おそらくこういうプレイヤー無視の事情で進む乱暴な運営方針に嫌気がさしたんだって、そう思ってた。

そして、そういう姿を目の当たりにして、ぼくは上司に断りを入れて、3F常駐にしてもらうことにした。というのも、これだけの事態にあって、ぼくが経営的な部分に顔を突っ込んで切った張ったのやりとりをできるわけもなく(あくまでコンサルティングで出入りしてる人、だったので)何に力を発揮したらいいかな、というところでそうしてもらうことにした。

それに、業務時間外も、引き続きこの事務所で手伝ってる分には構わないってことになって(GBMも逼迫していて追加でぼくの所属するコンサルティング会社にお金を払うのは難しかったんだろうし、個人が勝手にやってきて勝手に手伝ってるみたいになった)だんだんぼくは「Seal沼」にハマッっていったのである。

ぼくが3Fに入り浸るようになって、件の通信企業ともどうやら折り合いが着いたらしく、Kさんからは「二度とあいつらとは口をきくな」と言われた。直接接点があったわけではないので、口をきくような場面はなかったのだけれど、結局それは「クローズドβのデータをオープンβに移行できない」ってことだ。

GMたちは「結果として嘘となった」それと向き合うために、告知に努めたり、データ移行に変わるキャンペーンを企画しはじめた。

雨降って地固まる。とはよく言ったもので、そんな混乱もありつつ、『Seal Online』のオープンβ~正式サービスを引き受けてくれるポータルサイトが決まり、先に計画が進んでいた発表会についても、そのポータルサイトの公表(つっても案内状が出てる時点でバレバレなんですが)を兼ねてできる! やったね! という雰囲気になっていった。やっぱ後ろ向きの話題を吹き飛ばすのは、前向きの話題だ。

発表会当日の役割分担をGMを交えてやっていたときのこと。受付は確か段取りを請け負っていたSさんが手配してくれた気がする。それ以外の、誰が場内でゲームの操作をするのか、誰が事務所に待機するのか、そして誰が「着ぐるみの中に入るのか」などを社内で決めていった。

進行表もSさんから送られてきていて、K社長挨拶、ポータルサイト社長挨拶、ゲームのお披露目・解説・デモプレイ、質疑応答、試遊台でのプレイ……シンプルな進行で、これならそんなに混乱もないよな、と思っていたときのこと。

「あれ? このゲームのお披露目・解説って誰がやるの? GM_Kabra?」とぼくが聞くと、「いやいや、僕はデモプレイをしなきゃいけないので、直前の解説なんでできないですよ」と言う。GM_Bangdollも「会場の後ろでプロジェクターの切り替えとかをしなきゃいけないんで……」という。GM_Teraphy?「着ぐるみの中です」 マジで? Kさんは、やんないよね、っつかできないよね。Cさんは日本語ダメだろうし、表に出ない人なんだっけか。エンジニアは全員事務所待機だし……

「澤さん、やってください、得意そうだし」とGM_Kabra。
その得意そう、っていうのはどこから来ているのかわからないが、おおよそその直感は正しいぞ。

準備もどうにか進んで当日。直前になって、大変なことがわかる。

会場に引かれていた回線のルーターが、クローズドβのサーバーにアクセスできないタイプのやつだったのだ。前述の通信企業の会員専用コンテンツサービスというやつは、ルーターが専用か、あるいは当時まだ珍しかった切り替え機能付きのやつを使わなければならなかったのである。何をどう切り替えるタイプだったのかはもう忘れたし、今となってはなかなかそういうことはないのだけれど、面倒な時代でしたね……

クローズドβのサーバーにアクセスすることを潔く諦めたとして、残るは「浅草橋にあるテストサーバー」か、「韓国の開発元にあるテストサーバー」のどちらかへのアクセスだ。だが、どちらも専用のクライアントソフトが必要で、それを当日のゲーム解説までの間にダウンロードしきれるかどうかは怪しかった。しかも複数台あるわけで……

これには頭を抱えた。できれば日本語化も済んでいるクローズドβのサーバーにアクセスしたい。テストサーバーは何につけても不安定だ。どうしたものか……

色々考えあぐねていたが、Kさんが電話一本で解決してしまった。浅草橋から「テストサーバー用クライアントソフトをインストール済みのPC」をエンジニアに持ってこさせてしまったのである。

着ぐるみがそこそこデカいので、軽トラを借りてそれで搬入する手はずになっていたのだが、その軽トラの荷台にエンジニアがテスト用のPCとモニタを抱えて乗り込んで……という寸法だ。(道交法で、ドラックの荷台に荷物番を載せて良いというのがあるというのは、この時初めて知った)

……ただ、ちょっとぼくの記憶も曖昧で、ひょっとしたら「テストサーバーごと」運んできたのだったかもしれない。なんとなくテストサーバーごとみたいな気がしてきたが、それはそれで無茶苦茶な解決法だ。

というわけで、発表会は無事開場、GM_SeraphimやGM_Teraphy(たぶんGM_Nashも交代で入っていたような)が中に入った着ぐるみ(ラビとオモモ)に迎えられ、プレスはじめ関係者諸氏が入場した。

そして予定通り、関係者の挨拶が進み、ゲームの紹介部分はぼくが、質疑応答でゲームに関しての内容はGM_Kabraが進めた。苦肉の策でテストサーバーに繋いだことにより、韓国語版ながらも最新の情報が見せられたことなど、ここ数日なり直前なりのゴタゴタはあったけれど、比較的スムーズに発表会は終了した。

でもね、あまりに寝不足だったのでよく覚えていないのが実際なんです。そう、もう、ぼくはその頃には浅草橋に平気で泊まりこむようになっていたので……

ってことで、下記の記事が当時とても印象的だったので、リンクを貼っておきます。

エキサイト/GBM、MMORPG「Seal Online」の発表会を開催
オープンβテストを12月23日より開始
(Game Watch)

かなり辛辣なことが書いてある(要は、社長たちがリップサービスにすても大げさなこと言い過ぎてんだろこれ、というまっとうなツッコミ記事)のだけれど、たしかこれ、ポータルサイト経由でクレームが行ったんじゃなかったかなぁ。伝え聞きなのと、昔のことなんで、記憶あやふやですが。ぼくから電話したんだったかなぁ。ちょっと覚えてないのだけれど、何件か記事について電話で何社かと遣り取りした覚えがある。

で、発表会の夜から、ユーザー登録開始。
なにしろこれまで「したくても家の回線があの通信企業のやつじゃないからできなかった」プレイヤーが大勢いるわけです。ユーザー登録が殺到して登録ページが開け……あれ?

ユーザー登録ページのあるsealonline.co.jpに、繋がらない。すごい人気じゃね? でもWebサーバー、そんなにしょっぱくないよね。ん? なんか、変だよ、これ、真っ白。ちょっとも読み込まない。

社内の回線がおかしいんじゃないかと、PHSを接続したノートPCで試してみても、繋がらない。これ、殺到ってレベルじゃねーだろ?

サーバーがおかしいんじゃないか(ドメインも、なんで.co.jpなのかも意味不明だし)、アップするHTMLとか間違ったんじゃないか、もう社内は混乱してしまって、何を点検していいのかもわからない状況。殺到といっても、少しずつ登録完了されていけば捌けるはずなのに、DBの中身を覗いてもらっても、誰も登録されてこない。いや、少しは登録がちょっとずつ入るだろ、DBぶっ壊れたか?

そんな絶望に包まれたそのとき、エンジニアチームからカタコトの日本語が発せられた。

「あの、DNSの設定、さっき変えたから、何日かウェッブ、表示されないです」
しれっと言うな、しれっと!

(気が向いたら、続きを書きます)

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