Seal the Love! Seal the Forever! -2-

まだ続きを望まれてしまった。望まれているうちが花だし、それがモチベーションでもあるので、今日も書きます。

浅草橋の雑居ビル。3Fは前々回も書いたようにブラック企業という言葉がポピュラーじゃなかったのが救いみたいなどうしようもない状況で、いったいどういう勤怠管理をしてきたのかよくわからない状況であった。だからこそ、ぼくがここに送り込まれたわけなのだが。

まだGBMにとってぼくは外部の人間でしかなく、契約上、週に2回だけ、4Fのきれいな(=殺風景な)フロアに顔を出すみたいなことになった。もともとぼくが務めていた事務所は岩本町にあって、午前中に岩本町に顔を出して、午後に浅草橋へ行くという取り決めになった。他の日は、品川あたりに別件で営業に出たりしていたはずだが、あまり覚えていない。

自己紹介と『Seal Online』の説明を受けただけの前回から、気持ちを入れ替えての業務初日@浅草橋。束になった伝票を整理してエクセルに入力、みたいなことをやったのだが……

1時間くらいで終わってしまった。
暇である。ほんとうに暇である。

2003年当時、スマホで暇つぶしなんて文化もなければ(二つ折りのケータイを使っていたし)、FacebookやTwitterもない。持ち込んだ私物のノートPCにしたって、今みたいにWiFi飛び放題ではないのでネット活動的なことはまったくできない。

『Seal Online』をやろうにも、事務用に充てがわれたパソコンは、S3 Savageで(って書くとSealの古参ユーザーはニヤリとするだろうけれど)、こいつがグラフィックボード(というかチップ?よくわかんなくてすみません)になってるPCではSealは動かないのである。GeForceかRADEONを使ってください、GeForce推奨ですみたいな時代。ソリティアでもやるか、みたいな。

そうやって暇を持て余していると、誰かが4Fへ上がってきた。4Fは3Fと違ってエレベーターを降りたところに目隠しのパーティーションは無い。暇を持て余しているとはいえ、エレベーターが動いている音が聞こえたら、背筋を伸ばして仕事をしてるっぽくするしかないのだが……

果たして、エレベーター特有の両開きドアがオープンして出てきたのは、でっかいカバンを持って、ずいぶんラフな格好をした色眼鏡のおっさんだった。おっさんはぼくを見つけると、ぼくが誰だなんてことを聞くこともなく、「んー、Kさん、いますか?」とカタコトの日本語でぼくに語りかけた。
あー、韓国語で返したほうがいいのかと、あまり正確じゃないのは承知で「Kサジャンニンケソ アンゲシムニダ」と適当な韓国語(K社長様はいらっしゃいません)で答えると、その人はニヤニヤして階下へ降りていった。誰だったんだろう……

するとしばらくして、Kさんがさっきのおっさんを連れて戻ってきた。「澤さん、紹介します。Cさんです」と極めて普通にKさんに紹介される。ぼくはまた、こないだやったのと同じように「チョウム ペケッスンニダ」から始まる挨拶をした。Cさんは「あなたニホンジン?」とぼくに言う。「え、あ、はい。そうですけど」

「韓国語、上手ネ、韓国の俳優みたいネ」
「!」
……後にも先にも俳優みたいだと言われたのは人生でそれ一回である。しかも上手いと言われた韓国語は、一つ覚えの挨拶でして。

そしてCさんはぼくにCD-ROMを手渡して、再生するように言った。CD-ROMの再生くらいなら事務用のPCでもできる。CD-ROMをトレイに滑らせ、WindowsMediaPlayerを起動すると……

古い一冊の本が開かれるところから始まる、あの『Seal Online』のプロモーションビデオだった。

「これ、発表会で流しますネ。イイデショ」とドヤ顔(当時はドヤ顔という言葉も無かったが)のCさん。冒険者たちが軽快な音楽をバックに世界を駆け抜けていくそのPVは「やっぱ『Seal Online』ってすげぇじゃん」と思わせるのに充分だったし、同時にぼくは心の中で「ラストがマトリックスのパロディかよ……」とズッコケもした。

そして、妙にそのBGMが気になってしまい「この曲、MP3かなんか、ありますか?」と聞いた。Cさんはニヤッとして「アルヨ? ファイル、入ってナイ?」とPCを指さした。「! このファイル、コピーしといていいですか?」「んー、イイヨ」相変わらずニヤニヤしたまま、CさんはKさんとともに階下へと戻っていった。

何度も聴いた。持ち歩いていたイヤホンをPCに挿して、何度も何度も聴いた。

そして日が落ちる頃、『Seal the Love』の日本語詞をぼくは書き上げた。

これが、ぼくにとっての、『Seal Online』に関する初めての仕事である。

(気が向いたら、続きを書きます)

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