Seal the Love! Seal the Forever! -Zero-

気が向いたら書くということにしておいたら、案外Twitterなどで続きを期待されてしまったので、続きを書く。前回は『SealOnline』にぼくが「合流」したその瞬間を書いたわけだが、そう、皆さんご存知のようにSealはぼくが来てから運営が開始されたわけではない。ぼくが浅草橋に訪れたときにはもう、日本の某巨大通信企業の東日本、西日本を股にかけたネットワークにて、「クローズドβテスト」が行われている真っ最中だったのだ。

これから書くのは、ぼくの見たことではない。数名から聞いた話を総合しての逸話である。だから、間違いもあるだろうし、事実とは相違するかもしれない。だが、これがなければSealはこういう形で10年も愛されなかったという重要な出来事である。

クローズドβ当時の運営企業の名はGBMといった。Game Broadband M、M、mmm……Makerだったかな、なんだったかな。そこの社長はKさんという韓国人で、一言でいうと「逃げない、粘り強い」という性格の人だ。一緒に仕事をしていた数年間、良いことも悪いこともたくさんあって、たぶんちょっとだけ、いや、かなり悪いことのほうが多かった感じもあるけれど、人に関する評価をするものでもないので、ここは大げさに彼の「偉業」について書く。

当時、ポスト『ラグナロクオンライン』を求めて、日本の運営各社やネトゲで一発当てようというベンチャー企業が韓国に渡り、それこそネトゲを「物色」していた。日本での営業権を獲得するためにしのぎを削っていたのだ。まだその頃は数十万ドルで話がつくものも多かったと思うが、それでも日本Onlyの権利で数千万円である。しかも、三年更新などの条件があって、三年後にはまた数千万円を支払う羽目になるような、そんな契約が多かった。

彼は『Seal Online』に目をつけた。これならポスト・ラグナロクになれる。当時はポリゴンのキャラクターにカートゥンレンダリングのMMOは珍しかった。そして日本暮らしが長いこともあり、彼は日本のアニメやマンガのコンテンツを充分に知っていて、『Seal Online』の描かれる世界が本当に日本向けであることを体感していた。だから、渡韓して「買い付けに」行ったのである。
もちろん、競合他社も交渉を始めていて、そんなに金持ちでもない彼は、当時の『Seal Online』の開発会社であるG社の社長に営業をかける。
「日本で運営を始めても周知されなければ意味が無い。まだ日本はオンラインゲームでのヒット作が数本しかない中で、G社の名前がどれだけ轟くと? 俺にいい案がある。一気に日本全国でβテストを開始できる策がな」と。
ひょっとしたらその時の彼はブラフをかけたのかもしれない。G社の社長はそれに興味を持ち「本当にそんなことができるのか? どうせ嘘だろう。そんなことができる会社になら、契約金無しで『Seal Online』の運営権を渡そうじゃないか」と大げさなことを言った。
おそらく、成し得ないと思ったのだろう。誰だってそう考える。まったく無名の、実績も何もないできたばかりの運営会社。ここが日本中を相手にしたクローズドβなどできようはずがない。サーバーを立ち上げて、ほそぼそとホームページで告知をするのが関の山だ。
ところが、日本に帰ったKさんは、どこをどうしたのか巨大通信企業でのクローズドβ展開を取り付けてしまった。しかもこの通信企業、それまで東西同時にコンテンツ展開をしたことがなかったらしく、その点でも東西を繋ぐ新たな試みとして大々的に扱われることになった。サーバー群も、堅牢なデータセンターも、帯域がリッチな回線も、当時としては破格のインフラをブン回してのプロジェクトとなった。テレビCMや回線契約者に届くパンフレット、日本の主要サイトに掲載されるバナー広告、ビッグプロジェクトなだけにWebメディアの注目も高い……順分満帆を絵に描いたようなそんな未来が待っていた。

さて、G社への手土産は揃った。あとは契約をしに韓国へ……というところで、Kさんは人は「欲をかく生き物」であることを思い知らされる。G社の社長が連絡を入れてきたのだ。「『Seal Online』は、おまえになんか渡さぬ」と。
さっきの順風満帆な未来を現実のものにするため、日本では本格的にクローズドβの準備が始まっていた。通信企業が、サーバーも、回線も、全部を用立て終えて、スタンバイしている。こんな状況で、もし契約が破談となったら、通信企業からどんなペナルティを受けることになるかわからない、そして追われ者になれば、もうこの国ではビジネスができなくなる。まさに「ハシゴを外される」ような状況。逃げ場がない。なんとしてでもG社に契約のサインをさせ、『Seal Online』を通信企業のサーバー群の上で起動させなければ……
頭を抱えながら社内を見回し……彼は社内にあるテストサーバーに目を留めた。そして、その横でセットアップをしていたエンジニアに静かに命令したのである。

「おい、おまえ、そのサーバーを持って俺に着いて来い。韓国に行くぞ」

窮鼠猫を噛む、という言葉がある。嘘から出た真、という言葉もある。何がブラフで、何がファクトか。『Seal Online』の営業権を巡る事件は、追い詰められた彼の一噛みで大きく変わった。

「そのサーバーに『Seal Online』をインストールしろ、それが終わるまで俺は帰らん」

G社の応接室。正座をして彼は、次にG社の社長がそっぽを向くようなら、土下座も寝下座も辞さない覚悟でいた。
(余談だが、「寝下座」なんて言葉、ぼくは彼に教えてもらうまでまったく知らなかったし、寝下座とは何かを聞いたときに思ったのは「それって五体投地じゃん」ってことである)
「わかった、『Seal Online』の契約をしよう」G社社長は、ポツリと言った。

根負け。そう、彼の覚悟に観念したのである。たかだかサーバー1機に『Seal Online』が入るわけはない。しかし、それを持って(っていうか持ってたのはエンジニアさんで、彼はその後『Seal Online』の守り神的存在になる)韓国までやってきた。テコでも動かぬというその気迫に、欲をかいたことを恨めしく思いながらG社社長は契約書にサインをし、無事に日本での営業権をKさんは獲得したのである。

実際は、韓国で『Seal Online』を運営していたY社の口利きや後押しもあったわけだが、武勇伝なんてのはこれくらいが丁度いい。

それに、この時のことが遺恨になって、その先、塩肉が運営的に大変苦労をすることになるわけだが、「え、開発会社がヘソ曲げてたのって、これが原因だったんじゃねーの?」ってことに気づいたのは、ぼくが『Seal Online』を離れてからのことであり、人生、何が尾を引くかわかったものではない。

(気が向いたら、続きを書きます)

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