映画『プロメテウス』感想

映画『プロメテウス』。人類の起源を解き明かす的な予告/CMだったけれど、いきなり冒頭で、ある意味この世界観での人類の起源が解き明かされてしまったようなものなのでびっくりした。
あんましネタバレにならない程度のことをまず書くと……。

  • 『アラビアのロレンス』を観たくなる
  • 船長が特攻するとき粋なことを言うし、クルーも粋なこと言うのでなんかそういう決まりでもあるんだろうか、ってくらいカッコイイ感じあった。
  • 総じてSFホラーの定石というか、『ALIEN』以降、海底基地モンスターパニックものなんかで数多く使われてきたストーリーの流れ(黒幕含む)なので安心して観てられる感じがあった。
  • ショウ博士、リプリーよりもタフな感じするけど、漫画っぽい感じでのタフさなので、リプリーみたいに「続編を重ねるごとに歴戦の戦士になりすぎてチートっぽい」んじゃなくて「ご都合主義でチートぽい」感じが漂ってしまっている。本人由来の強さが最も発揮されているところは全自動手術機のシーンだと思う。
  • 絶体絶命のとき、「最後のトドメ」は知恵で逆転!みたいなのも『ALIEN』シリーズを踏襲していて良い感じする。
  • CGばっかりというわけでなく、セット美術、特殊メイクや操演?っぽいところもあって生々しさがよく出ていた。
  • スタッフロールとともにさっさと退出してしまう人たちの顔が総じて微妙だったのが印象的だったし、そういうすぐ退出するようなカップル客に至っては、必ず女性が先にスタスタ歩いているのが面白かった。人類の起源に迫るみたいな告知が間違っていたっていうのは、そのとおりだと思う。

以下、ネタバレ含み。


結局、人類の起源はなんだったのかというと、ややデカい人型の宇宙人(エンジニアと呼んでいる)が太古の地球を訪れ、謎の薬を飲んで自らの体を海に投げ出し、DNAレベルまで分解して浸透(これが多分いわゆる「生命のスープ」なのでは?)したことにより、そこから生まれたのが生命ひいては人類、ということらしい。

そして、宇宙人は人類が育った頃合いを見計らって、人類に対して「さらにそれを強化する薬のようなもの」を使用しようと画策していたが、問題があってその薬を培養していた星から飛び立てなかった。その星ってのが今回の舞台となるLV223。

薬とか書いたけど、実際に「飲用」した場合に最終的にどうなるかは描かれていない。この映画に出てきた「薬に関わる」モンスターは下記。

  1. 薬の保管庫(?)にいた蛇状の生き物。
  2. 蛇状の生き物に口から入られた男はモンスター化。彼は仲間から火炎放射を浴びせられた上に轢死。
  3. 一滴を酒に盛られた男は、奇病にかかり、モンスター化。モンスターっぽくなったところで火炎放射で処分された。
  4. その男の射出した精子が不妊症のエリザベスの子宮に着床したところ、腹腔内でたった10時間で妊娠3ヶ月と同様の大きさまで成長するイカ型生物に育ち、体外に摘出された後も1日ほどで等身大サイズに成長した。しかもエンジニアに幼体を産みつけた(まぁ、喉に管を突っ込んだので産みつけたのだろう)後に絶命。
  5. エンジニアの体躯を破って登場したモンスター(ALIENぽい)

船長の推測によればLV223は軍事工場(生物兵器の実験、生産場)みたいなものということなので、生物兵器説でこのモンスターを考えてみたいと思う。黒い怪しい液体は「薬」という仮定。

薬を盛られた男は奇病にかかって徐々にモンスター化。この薬は多分「対象それ自体を強化する」ものなのだろう。

蛇状の生き物に寄生されるとこれまた凶暴になってモンスター化する。蛇状の生き物は、自律型注射器みたいなもので、体内に薬そのものが装填されているのではないか。自ら薬を飲まない者に対して使用。あるいは敵陣に放ってバーサーカー化を誘い、内部から壊滅させるみたいな使い方。

ここまでは、なんとなく観ていればわかる。だがイカ型生物(デカいフェイスハガーなんだけど)が劇中の描写だけではまったく意味不明。

『ALIEN』とは設定を少しずつ異にしているとわかりつつも、以前のシリーズから類推してこの巨大なフェイスハガーについて考えてみたい。
『ALIEN』でのフェイスハガーは、卵(おそらく子宮メタファーの容器)から飛び出て人間の喉から産卵管を突っ込み、産み付けたら絶命する「産卵のみを目的とする器具」みたいなものだった(中間体という解釈)。そして、その後産み付けられた人間の胸を食い破ってALIENが成体へ、という流れ。
なのでフェイスハガー自身が(フェイスハガーの本能によって、というのは変だが)繁殖するというシーンは『ALIENS』以降の各シリーズでも描かれておらず、エイリアンクイーンが卵を産み、その中にフェイスハガー入っている、というのが常だった。(クイーンの出てこない元祖『ALIEN』のディレクターズカット版では、人間が繭のようにされる描写があるので、いずれにせよ「容器」は必要なのだと思われる)

ということで、しかるべき卵状の容器に「フェイスハガーの素」を入れるとフェイスハガー自体が誕生する。そして、「フェイスハガーの素」になるのが「薬を飲んだ人間の体液」。最終的なALIENに行き着くまでに、少々面倒くさい生産の仕方が必要な生物兵器、というのはどうだろうか。これが『ALIEN』と『プロメテウス』の折衷案的な設定。そう仮定すれば、薬を盛られた男が射出した体液が、エリザベスの体内で育ったのもうなずける。「卵状の容器で誕生、育成させる」べきものを、本物の子宮で育ててしまった、という感じ。

あるいは、これらのことが全てエンジニアにとっても想定外で、宇宙船が飛び立てなかった最大の理由が意図せずALIENが発生してしまったことによる混乱、という見方もできる。
これはピラミッド内のホログラムでエンジニアが何かから逃げるところが再生されたので、何から逃げていたのかを考えるとこの見方もあながち間違っていないような気がする。(薬を飲んでモンスター化した同僚エンジニアから逃げているにしても、それなら「殺せる」はずである)

エンジニア想定外説に立つと(ってどんな説だよ)、今回の「事件」でALIENの「生産方法」を知ったエンジニアが、それを卵型の容器によって量産、運搬しようとして失敗したのがLV426(映画『ALIEN』の舞台)に出てくる宇宙船という見方もできるのではないだろうか。(容器に体液を充填するエンジニアを想像するとおぞましいですが)

加えて、この映画のエンディングでエリザベスがエンジニアの母星へと航行するくだりがあるが、この後、エリザベスがエンジニアに事の顛末を伝えてしまったことにより「ALIENというものを生み出せる」とエンジニアが気づく、いう流れになっていると、始末に終えない感すごくて楽しい。イカ型生物、ひいてはALIENの発生は、エンジニアにとっても想定外だった、というほうが自然に思えてきた……。

そこで、エンジニアがこの突然変異的に発生するとわかったALIENを、先程の強化薬モンスター同様、兵器として利用するとしたら、どうしたらいいだろう。フェイスハガーによって産み付けられ、胸を食い破られた「宿主」は絶命してしまうので、薬のように飲用者を延命させながら「強化する」という用途では全く用いることができない。

当初の予定どおり、いい頃合いに進化した人類に対して、再度強化させようと目論むのであれば、男女の別によるモンスターの「発生分け」を考えることができる。

男には「薬」を飲ませ(蛇状の生物を使う)そのままモンスター化。
女には男の体液を受け容れさせて子宮でフェイスハガーを育て(不妊症のエリザベスの体内で育ったことから、イカ型生物の「揺り篭」が必要)、フェイスハガーが産み落とされると、そのまま女の喉に産卵管を突っ込んで産み付け(フェイスハガーの役割終わり)体を食い破ってALIEN誕生。
これは怖い。「容器」の補充も不要だし、地球に再来して蛇状の生物さえ放てばいい感じする。

まぁ、こういう「設定の余地」みたいなのがある映画ってのは、観終わってもいろいろ考えてしまうし、楽しいですな。
ホラー映画だけに、登場モンスターの設定についてあれこれ考えてしまったわけだが、3D版で是非観てほしいところは、観ているだけで美しいと感じる、エンジニア達が航行に用いたと思われる星図のシーン。アンドロイドのデヴィッドも感嘆(アンドロイドなのに感情っぽいことを学習していたり、人間に似ているとか似ていないとかの冒頭から繰り返されるくだりは、この瞬間への伏線なんじゃないかと思えるほど)です。
あと、ウェイランドのおっさん。老体にムチ打って惑星間航行に同行したというに、未知の技術で命永らえることができるかもと期待して出会ったエンジニアからは瞬殺の一撃を食らうとか「出てこなければ!やられなかったのに!」感すごい。
ヴィッカーズ、生き残っていたら妄想。地球に帰還してユタニ姓の人(AVP2でプレデターの残骸を受け取った人の子供か孫)と結婚してウェイランド社を継ぎ、ウェイランド・ユタニ社に社名変更。デヴィッドは感情的なものを学習しすぎた欠陥品として、新たに(ある意味冷徹でアンドロイドとしては正しい)人造人間を開発。それがアッシュと同型の物、みたいにつながったらいいのに。

いろんな妄想含めて、ALIENシリーズが好きならちょうオススメ。人類の起源を知るために映画館に行った人にとってはおそらく微妙、という映画でした。あと、デヴィッドの指紋に「W(ウェイランド社を示す)」のマークがついてたのに速攻気づいたカミさんすごい。

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